月: 2016年1月

学びとおしゃべりを楽しんだ夜

夫の会社の新年会に、2~3年ぶりに招待された。夕食の前に何かしらのイベントがあることが多いのだが、今回は航空救助隊Regaの見学だった。約2時間のとてもていねいな案内で、PPを使った説明に始まり、電話の応対などをするオフィスを窓越しに見学したり、整備中の小型ジェットの中に入らせてもらったり。

最後にパイロットや医師のインタビューをまとめたビデオを観たのだが、このときRegaで働くパイロットは普通の旅客機のパイロットとは違うことに気がついた。Regaはヘリや小型ジェットで事故現場からけが人を病院に運んだり、病人をある病院から別の病院に運んだりする公益財団だ。つまり、乗客が機内で死亡することもある。もちろんパイロットの仕事は操縦だけれど、重傷を負ったけが人や重症患者が設備の整った小さな機内で死亡すれば、それは直接パイロットの心に響く。そんな日常と健全な距離を取ることができない人には、きつい仕事だ。

国外から患者をスイスに連れ戻すときには、この小型ジェットで

国外から患者をスイスに連れ戻すときには、この小型ジェットで

整備中のヘリ。この中は見られなかった

Rega見学のあとは、以前診療所だった古い大きな館で夕食。私たちが案内されたのは屋根裏の広い1室で、古い木の匂いなのか、独特の匂いがしていた。床も天井も木でできていて、壁は漆喰だろうか、天井と同じ茶色い木の柱が所々に埋め込まれている。いい雰囲気。

7人掛けのテーブルには、まだ会ったことのない新しい社員とその彼女。元書店店員だったという彼女とは波長が合い、会話が弾んでとても楽しい夜になった。普段、特にスイス人の間では聞き役が多い私の話に、この夜は同じテーブルの人がみんな聞き入っていた。自分でも饒舌になっていたのを感じた。なぜだろう。あの部屋とも相性が良かったのだろうか。

ていねいに書く

新年明けて早や3日。明日からはまた通常の日々がやってくる。といっても、フリーになった私にとって、家で過ごす休みはあまり休みらしくない。この数カ月間、以前の勤め先の仕事を少し手伝うことになっているので、クリスマスもお正月も合間を見ながら翻訳の仕事をしていた。でも、クリスマスから1月2日辺りまではほとんどどこも休み同然なので、エージェンシーからは仕事は来ない。それがわかっているだけでも、気分的には違うかな。安心して出かけられる。

気温は相変わらず高く、クリスマス前後は毎日いい天気だったので、夫と二人、あちこちに歩きに出かけた。山はどこも人でいっぱい。山岳レストランも人でいっぱい。スキーに行く代わりにみんな歩いているのではなかろうか。

大晦日も元旦も、日本の行事とは無縁に過ごしているので、例年同様、というか、年を追うごとに「元旦」という実感がどんどん薄れていくような気がする。でも、逆に年が変わったからといって何かがリセットさせるわけでなく、時間は継ぎ目なく過ぎていくんだと実感するようになったかも。

そんな時間に追われる時間はまだまだ多い。時間に追われているわけではないのに、なんだか気が急いているときも多い。プリントアウトした翻訳原稿を推敲するその字に、そんな感覚が表れる。だから「ていねいに書く」。これが今年の抱負。ていねいに書いて、訳もなくはやる気持ちを抑えられる、かな。

アールガウ州まで出かけ、ロイス川のほとりを歩いた。苔むした木のベンチがぽつぽつと置かれている

アールガウ州まで出かけ、ロイス川のほとりを歩いた。苔むした木のベンチがぽつぽつと置かれている