Simply Redとお寿司

次の翻訳書の原稿を日本に送ってほっとしたと思うや、あっという間にまた再校ゲラが手元に届いた。少し余裕が出てきたと思って、10月から再開するつもり の通信教育の教科書を読み始めたり、5~6年前の誕生日に夫に買ってもらったスイス人作家シリーズをやっと手に取ったりしていたけれど、なんとなくまた少 しあわただしい生活に戻りそうな気配。

そうこうしているうちに、世の中はすっかり夏。とはいえ、この1週間は雨の多い肌寒い日が続いている。木曜日はSimply Redの野外コンサートに出かけた。頭上は一面雲に覆われている。いっとき青空が広がったが、雨もぱらついたりするすごく不安定な空模様。それに寒い!た ぶん気温は15度前後くらいだったのではないだろうか。でも、コンサート中は雨もなく、2曲目くらいからもう総立ち状態。会場はディスコと化すーところま ではいかないが、みんな心地よさそうにリズムに体を揺らしていた。

去年のSealも良かったが、Simply Redはさすがベテラン~といった感じ。スリーピースに身を包んで舞台に現れたときはちょっとびっくりした。こんな衣装に身を包んだシンガーの舞台なん て、これまで観たことがなかったのだもの。ギターのアジア人ぽい男性はなが~いきれいな髪をしている。ときどきその髪の毛をばっさばっさと振り回す。「モ ンゴル人?」と言う夫に「日本人でもおかしくないよ」と応対していたら、やっぱり日本人だった。これもオドロキ。鈴木賢司という方。世界の舞台で活躍して いるミュージシャンがいるって、なんとなく誇らしい。

昨晩は久しぶりにろう者に混じって楽しい時間を過ごしてきた。ろうのセルフヘルプ団体「Sichtbar」が「寿司の夕べ」を催すということで、友人一人 を誘ってお手伝いにはせ参じたのだ。午後2時から10時半くらいまでほぼ立ちっぱなしで、コシヒカリ5キロをお寿司にした。リーダーは 「Sichtbar」の経営者。もう1人の「板前さん」、彼の義理の姉と二人で以前お寿司のコースへ行ったことがあるという。彼の方はかなりの通のよう で、腕前もなかなかだった。前日に日本食品店へ買い出しに行ったのだけれど、そこで私は「お味噌汁係」と「ひじき係」に任命された。ひじきなんて、みんな 食べるのかなあ…と懸念顔の私をよそに、彼は「何でも試してみなくちゃ!」とヒジョーに明るい。そう、彼らはよく「試してみよう」と言う。自分たちの権利 を得ようとスイスの各言語圏が一つにまとまり、最近、スイスのろう世界はすごく飛躍しているような気がする。

私たちはほとんどキッチンにこもりっきりだったので、お客さんの反応はあまりよくわからなかったけれど、最後にみんなの前で紹介されたときには暖かい拍手 をいただいた。食器洗い係や会計係の人たちも常に笑顔でジョークを飛ばしまくる。合計4人の「板前さん」は、それほど細かく担当を話し合ったわけでもない のにそれぞれ仕事を見つけて、不思議なことにきちんとお寿司が出来上がっていく。まあ、巻き寿司の中身が予定と違ったり、忘れたりしたものもあったけど ね。そんな細かいことは誰も気にしないのですーと、私は信じている。

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