月: 2009年11月

秋の音によみがえる記憶

ボリスはあの2日間、ちょこっと遊びに来ただけでまた来なくなってしまった。いったい今、どこで何をしているんだろう。

Herbst2009この数日は天気が悪い。雨が多く、風もけっこう強かったりする。広葉樹はもうすっかり秋の色になり、陽を浴びて金色に輝いていたけれど、今は芝生や歩道を 埋め尽くしている。その落ち葉の上を歩くのがけっこう好き。カサカサ、ときどきシャリッと乾ききった落ち葉を踏み潰して歩く。でも、もっと好きなのはポツ ン、ポタン、ポタポタと大きな音を立てて雨を受け止める落ち葉の上を歩くこと。先日、久しぶりにそんな歩道を歩いた。心に心地よく響く音に耳を傾けなが ら。

好きな音はいくつかある。昔のテレビドラマでよく響いていた靴音。おばあちゃんが引いていた乳母車の車輪がカタコトと地面の上を回る音。小川のせせらぎ。 静かな波が浜辺に打ち寄せる音。傘に落ちる雨音。そろばんをはじく音。遠くで聞く車のドアを閉める音とヘリコプターのパタパタという音。まつぼっくりが開 く音を聞くと「ああ、春が来たんだなあ」と思う。この音は今のアパートに引っ越してきてから気がついた。古い木の床がギシギシと鳴る音。ピアノの音色。… まだ何か忘れているかも。