ちょっと休憩

7月1日にルーシャとリーノがやってきてからというもの、時間の経つのが一層速くなった。カリブの休暇なんて、もう遠い昔の出来事のようだ。あんなに強烈だった印象もすっかり薄れてしまった。

最近は個人行動が増えてきたけれど、ほんわかと仲のいい兄妹

今年はそれでなくても、一つの仕事から次の仕事へと飛びわたってきたような気がする。うれしいことだけれど、時間に追われてばかりだ。とはいえ、過去の経験から、ストレスで心身を壊さないようにと注意はしている。夜の仕事はなるべく控え、仕事を切り上げた後は体を動かす。天気がいいときは、読み物など外でできることはなるべく外でする(これは、ただ単に好きだからかな)。な~んて、思い返すと、毎日夜中まで仕事をしている人に、「ちぇっ」と舌打ちでもされそうだ。でも、なるべくストレスを減らし、かつ、いろいろな仕事に挑戦する。無理な仕事を引き受けてクライアントに迷惑をかけることは避けなければいけないが、挑戦は必要だ。

挑戦といえば、ここ数年間、よく聞くのが、ドイツ語より英語の通訳が求められているということ。私は英語の通訳はお断りさせていただいている。まったく自信がないからだ。翻訳でさえ、学校の成績を思い出しては「よくこんなことをやっているなぁ」と我ながら感心したりあきれたり。熟練通訳者の大先輩たちからはよく、「英語もやりなさいよ。仕事の幅がぐっと広がるわよ」と言われるけれど、そんな恐ろしいことはとてもできない。無理な挑戦は、やっぱり避けなくちゃね。必要なのは「健全な自信」。これも実際はなかなか持てないものだろうけど。

猫の威力

モグリの時もそうだった。瑞筆に書く内容がモグリに傾いた。

向かいの家庭も、うちより少し早く同じような猫を2匹飼い出した。そばに来ても逃げ出しはしないけれど、自分たちから近づくこともない

それから、道端で話をする相手が増えた。今の家では道端ではなくて庭で、だけど。それはやっぱりリーノとルーシャのおかげだ。驚いたのは、これまで目も合わせようとしなかった近所の子どもたちが、うちに遊びに来るようになったこと。いやぁ、猫の威力はすごい。まだまだ無口だけれど、猫と遊びたいがために、暗くなっても帰ろうとしない。で、様子を見に来た若い親たちとも、これまでしなかったような話をするようになる。

猫アレルギーはだいぶん良くなった。猫たちが外に出るようになり、夏の陽気に誘われて私も外で過ごす時間が増えたからだ。布地の多い居間にいるときは、空気清浄器を動かす。猫たちも大きくなって、毛がだんだん太くなってきたせいもあるだろう。前にモグリにしていたように、この子たちのお腹のいい匂いを嗅ぐことはできないのかなぁと寂しく思っていたけれど、最近は2匹に顔を近づけても喉の違和感は感じない。この分なら、この先は心配いらないかな。

うちから見える日没はいつも感動的

ルーシャとリーノ

家族が増えた。やっと。でも、一方では、こんなあっという間に、とも思う。

友人宅にまたもや子猫が生まれたニュースを聞いたのは、カリブの休暇を楽しんでいたときだった。初めはほとんど関心を示さなかった夫が、なぜか翌日「2匹もらおう!」と突然決心した。あとで「どうしていきなり決めたの」と聞くと、「さあ?休暇で気持ちがゆったりしてたからかなぁ」などと言う。

モグリによく似たルーシャは女の子。一見おっとりしているけれど、実はきかんぼうで好奇心旺盛。

モグリのオレンジ版のリーノは男の子。落ち着きなく動き回る一方で、ちょっと臆病。ホントに、猫にもいろんな性格があるものだ。

我が家にやってきて1週間以上が経ち、今では2匹とも私たちを飼い主と認めてくれたよう。でも、私は昼間仕事部屋に閉じこもっていることが多く、ふらっと出てきては悪さをしている2匹を叱ってばかりなので、2匹とも私の姿を見ると用心するようになっている気もしないではない。

悲しいのは私に猫アレルギーが出てしまったこと。引っ掻き傷が腫れてかゆくなるのはモグリのときもそうだったけれど、今回は2匹いるせいか、喘息のような症状に悩まされている。最近は、布が多い居間にいるときはマスクをつけ、夜寝る前には外のテラスでしばらく過ごし、肺を洗浄。でも、きれいさっぱりとすっきりすることはなく、だんだんアレルゲンが体内に溜まっていっているような感じがする。HEPAフィルター付きの空気洗浄機を注文したので、今はそれが来るのが待ち遠しい。

2匹なので、放っておいてもレスリングやら追いかけっこやらして遊んでいるけれど、その分、エネルギーの発散もすごい。じゃれていたのがいつの間にかケンカになることもしょっちゅう。追いかけっこをしているときは、走り回るというより、家の中を飛んでいる感じだ。今週末には外に出す予定だが、これもまた待ち遠しくてたまらない。

仲のいい姉弟

初めてのカリブ

また、真っ黒に日焼けしてしまった。でも、今回は私より黒い人が周りにたくさんいた。今回の休暇先はカリブ海だったのだ。これまで、私はアメリカを全然知らなかった。北も真ん中も南も。

黒人に囲まれるという状況もほぼ初めて。今回の休暇で、黒人に対して自分が先入観を持っていることをよく実感した。

大西洋側のビーチは波が荒い

バルバドスのゲストハウスには、ハンモックがいっぱい

サンゴの島バルバドスと火山の島セントルシアはそろそろ雨期に入るころで、ハイシーズンはもう終わっている。だから、ビーチもレストランもガラガラ。空には雲が何重にも重なり、時おりスコールがやってくる。でも、気温は30度近くあるし、太陽も時折顔を出す。いつもブリーズが吹いているので、かえって過ごしやすかった。

ラム酒の製造を見学できるバルバドスの聖ニコラス修道院

バルバドスは地元民と観光客が入り混じっている場所が多い気がするけれど、セントルシアはモロに観光の島という感じだ。ビーチはほとんどホテルの前にあり、誰でも入れるけれど、そんなところに地元民はまず来ない。デッキチェアの料金も、高級ホテル前のビーチでは一台50米ドルもする。公共ビーチだと10米ドル程度なのに。ビールの値段も場所によって大きく異なる。

いくつかの村をレンタカーで走り抜けた。車の中にいる私にじっと目を合わせる人が多く、おまけに何か叫んでいたりすると、そんな地元民のことについて、ついいろいろと考えてしまう。彼らは観光客が嫌いなのだろうか。それとも、好奇心なのだろうか。

セントルシアのCanariesという名の漁村。色とりどりの家がかわいい

彼らの祖先はその昔、アフリカから奴隷として連れてこられた。これらの島に住む白人の割合は数パーセント。でも、経済を牛耳っているのは、きっとこの少数派に違いない。私たちが泊まった宿もヨーロッパ人が経営していた。何世紀も前からラム酒を作っているところや、サトウキビ園を経営していたという施設を見学したけれど、以前500人もいたという「従業員」はおそらくすべて黒人だったはず。今、その施設で働く黒人はどんな気持ちなんだろう。お金を持った外国人観光客が自分たちの店を素通りし、観光客向けの場所にばかり足を向けるのを見ている彼らの胸の内は?

セントルシア南西にあるビーチ。少しだけサンゴもあり、シュノーケルを楽しめる

でも、私は彼らの中に入っていく勇気を持てなかった。小さいけれど、すごくイキイキした漁村で、写真を撮りたいと思いつつも、車から降りることはできなかった。セントルイスではどこの家にも電気は通じているけれど、水道がないという家はまだ多い。たらいで洗濯している女性の姿も何度か見かけた。下水はない。そんなところに住んでいる彼らが少し怖かった。自分とあまりにも境遇が違う人々が。

泳げる滝つぼへ行ってみたら、シブいおじさんの経営で、足の古い皮膚を食べてくれる魚もいたので挑戦。最初はものすごくくすぐったかったけれど、気持ちよかった~。足もつるつるに。また行きたい

 

 

セントルシアで人を雇って商売をしているヨーロッパ人は、「地元の人を雇うときにはものすごく用心しないと……」と言う。私の頭の中にも今だに「黒人=貧しい」という図式があり、彼らに対してはつい用心深くなる。でも、ビーチでデッキチェアや水上スキーを貸し出したり、アクセサリーなどを売り歩く地元の人々はものすごくフレンドリーだ。いきなり自己紹介から入って、私たちの名前や出身国を聞き、握手を求める。最初は一歩引いたけど、これがここのやり方。「要らない」と言えば、すぐ引っ込む。そして、別れ際には必ず「良い滞在を!」のことば。

毎日毎日、ビーチでごろごろしていただけだったけれど、スイスに来たときよりカルチャーショックは大きかった。そして、自分自身も少し知った。

もう少し長く滞在できたら、ひょっとしたらあの大好きな漁村で車を降り、「写真を撮ってもいいですか?」と聞いて、人々にカメラを向けることもできたかも。家の入口に立つ女性に、ベランダに座るおじいさんに、制服を着て元気に歩く子どもたちに、道路を横切るニワトリに……。いや、やっぱり難しいかな。

セントルシアのMarigot Bayに沈む夕陽

 

春の寒い日に思う

あの春の日々からまた冬へ。異常ともいえる温かさが何日も続いた後、芽を出し、葉っぱをつけた植物たちは今、危機に瀕している。明け方は零下、昼間も雪が降るという寒さが舞い戻り、元気に芽吹いていた我が家のアジサイも、葉っぱが茶色になってしまった。これからまた雪になるかもしれないというのに、大丈夫かしら。

目の前のタンポポ畑も雪の下に

雪が降ったり日が差したり。4月の天気は忙しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは庭の花やカボチャの芽くらいの心配で済むけれど、農家の方々の心中はそれどころではないだろう。かがり火などを焚くなど、いろいろな対策を取っているようだが、この冷え込みも異常だそうで、あまり効果は期待できないという。リンゴだかイチゴだか、今年は不作となるようだ。毎年、イースターあたりに天気が崩れるのが当たり前になっているとはいえ、この寒さは尋常ではない。

尋常ではないと言えば、私の鼻もなんだかいつもと様子が違う。今年は花粉症の症状がほとんど出なかったのだ。私の花粉症歴は自慢できるほど長い。日本にいるときは杉の花粉に大いに泣いた。まさに目も鼻も腫れるほど。こちらに来てからも、日本にいた時ほどではないにしろ、ヘーゼルナッツやシラカバの花粉に鼻を詰まらせ、目を潤ませ、呼吸困難に陥りそうになった。それが、今年はほぼゼロ!周りが花粉症に苦しんでいても、ゼロ!いったいどうしたことか。我ことながら不思議。

思い当たることと言えば、10年くらい続け、一昨年くらいに症状が軽くなってきたので止めた鍼治療。私は体質的に鍼は効きにくいようなのだが、10年ため込んでからその効果がようやく出てきたのかもしれない。

もう一つは新しい環境。4年半前に引っ越した場所には、木がほとんどない。周りは草原。ときどき、風の向きやその時に花粉をつけている木の種類によって、鼻がむずむずすることがある。これは200メートルくらい先に立っている柳かな。あ、これはあの道路沿いの街路樹かな、という感じ。

そして、おそらくこの家。ミネルギーという省エネハウスに住んでいるのだけれど、このシステムでは外気を2重のフィルターを通じて部屋の中に送ってくれるので、窓を開けて換気する必要があまりない。花粉が飛んでいそうなときは窓を開けなければいいし、中に送られてくる空気には花粉はたぶんほとんど含まれていないはず。朝起きたときはくしゃみの連発が出たりするけれど、以前は点鼻薬なしでは生きていけなかったことを思うと、まさに天国と地獄の差を見る思い。鍼治療を始めたときの願いは「完治しなくてもいいから、点鼻薬を使わなくてもいいようになりたい」。叶わぬ願いかと一時はあきらめたけれど、叶ってしまった。ウソみたい。毎日続けている、塩水を使った鼻うがいも効いているのかも。牛の歩みも千里だ。

そういえば、食道炎もよくなってきた。去年までは2か月に1回くらい胸やけに苦しまされていたのだけれど、薬を使わずに治す方法をいろいろと探し、1年前から腹式呼吸で食道と胃のつなぎ目の筋肉を鍛え始めた。当初は息を吸うと筋肉がだらしなく緩んでいるのがわかるほどで、筋肉痛まであったのが、今はだいぶんしっかりしてきた様子。そして!すごい運動を発見。これをやると、胸やけもすっと治まってしまうのだ。魔法のようなこの運動は、「耳たぶ回し」で知られている佐藤青児氏が発案したもの。体全体の調子を整える「シェー体操」というのがあって、これが胃腸に効く人もいるというので、半年くらい前から始めた。それから調子はぐんとよくなった。それでも、ストレスのせいなのか食べ過ぎのせいなのか、この半年に胸やけが2回起こった。5分か10分か我慢して、ふと「あ、あの体操をやったらラクになるかも」とやってみたら、スッと痛さが消えてしまったではないか。不思議!2回目の胸やけのときにも、この体操で苦しみから解放された。佐藤氏はいったいどうやってあの体操を考え出したのだろう。それにしても、こんな貴重な発案を無料で提供してくれる人がいる世の中に感謝感謝。