何をするでもない、夫と2人でてくてくとあちこちを歩いている間に初夏がやってきた。
5月半ばは10年ぶりくらいでジュラ地方へ一泊旅行。ルーシャは初めて1匹で夜を過ごした。同じ村に住んでいる、動物が大好きな友人に3回来てもらい、ルーシャにエサをあげてもらったり遊んでもらったりで、大助かり。次は2泊旅行もできそうだ。
古い橋の向こうに、両端からぎゅっと押し込まれたように建つ家並みが有名なサンテュルザンヌ。何度か行ったことがあったけれど、泊るのは初めて。この村を流れるドゥー川沿いのハイキングを予定してい
た。
雨の日が続いていた5月半ば、この日の天気予報も今一つだった。それでも旅行を決行。私は風さえなければ雨の日も好きなので、まあいいかと夫と歩き始める。お勧めのハイキングコースは4時間だったけれど、きっと雨になるし、サンテュルザンヌを出発して行けるところまで行き、また同じ道を戻ってこようということになった。
空は曇っていたけれど、雨に洗われた緑がいたるところで輝き、川沿いはまさに緑一色だった。川面も緑色に染まっている。平日で天気もいまいちとあって、歩く人はほとんどいない。お昼前に村を発ち、川とつかず離れず、林の中や草原の脇に延びるハイキング道を黙々と歩く。頭上からは鳥のさえずりが降り注ぐ。1時間もしたころだろうか、朝食抜きだったの
で、川のほとりにシートを広げて座り、持参したサンドイッチを頬張った。
そばの川面に小さな白いものがかたまりになって浮いている。さっきも見かけた。夫がそばに寄る。私も行ってみて驚いた。なんと、それは白い小さな花だった。水草の花なんて初めて見る。こんなものがあったのか。和名は梅花藻(ばいかも)というらしい。
少し休んでまた歩き出したが、すぐにぬかるみの道が現れた。まだ買ったばかりのハイキングシューズだったし、ずぼずぼと沈んでしまって泥だらけになりそうだったので、引き返すことに。往復約2時間歩く程度だ。まあ、よしとしよう。すると、雨もぽつぽつと降り出し、用意した折りたたみ傘を広げるほどの降りになった。これはこれで風情たっぷり。水面に広がっては消えていく小さな輪を見るのも楽しい。
ジュラ地方と言えば、青いなだらかな丘陵にモミの森が広がるイメージ。でも、この辺りは全く違う。翌日は来た道と別のルートをドライブしながら帰った。そのときに、これぞジュラ!という森林風景の中を走り、「次はこの辺りのハイキングだね」と2人で相槌を打った。
スイスは川と湖と森と山でできているようなもの。歩くところはいくらでもある。有名な観光地へ行かなくても、そこらじゅうからアルプスを眺められるし、自然保護区になっている湖や川、湿地帯も数えきれないほどある。思いがけず野生動物に出会うことも。
スイスに来たばかりのころは、なんでみんな雨が降ろうが槍が降ろうが歩くんだろう?と横目で見ていた。今や私もすっかりスイス人になったのか。

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