月: 2024年10月

新しい秤

これはキッチンで35年間使っていた秤。いろんなものを量ってきた。ここ数年、精度がだんだん疑わしくなってきていたけれど、さして支障もなかったのでずっと使い続けてきた。

ところが、昨冬辺りからどんどん太り出してきたルーシャのダイエットを始めてから、エサの量をもう少し正確に量りたいと思い、夫と相談してやっぱり新しい秤を買おうということになった。人間が食べるものよりネコが食べるものを正確に量るため、という動機がちょっと笑えるが、かくして35年間お世話になったアナログ秤とお別れすることに。使っていたときは、もちろん特に何の感情もなかったけれど、いざおさらばと思うと何だか手放しがたい。夫は、じゃあとっといたら?と言うけれど、器もひびが入っているし、それじゃあ新しい秤を買った意味がない。

で、こっちが我が家の新しいデジタル秤。竹製でこぢんまりしている。器を載せた後に左側のボタンを押せば、ぱっとゼロにメモリを合わせられるところが嬉しい。おかげで朝一番にルーシャにエサをあげる夫もきちんと量を量るようになった。これで冬の間、やることがないからエサをねだりに来るルーシャに厳しくダイエットさせられる。

森の中は今、キノコだらけ。でも、どれも食べられる代物ではなさそう。緑が目に鮮やかな苔の絨毯から小さなキノコがにょきにょきと生えているのは何とも愛らしい。夫と一緒でなければ半時間くらい、ハイキング道の脇を行ったり来たりして、苔むした森やキノコの群れに見惚れているかもしれない。

近所の塀に絡まる蔦の葉も赤味が増してきた。日が短くなり、気温が下がっていくのはすごく寂しいけれど、秋の味覚や黄葉・紅葉は楽しみだ。もう少し晴れ間が多くなってくれると、ハイキングももっと楽しくなるのに。

 

 

 

 

 

秋の始まりはアルプスと森にて

汗だくの農家訪問を終えた後は、久しぶりに会う友人知人との時間をしばらく楽しみ、それから9月初旬のハイキング休暇まで仕事に追われた。その間も、気になる山の天気予報を何度も見てはため息をついていた。曇りやら雨のマークばかりなのだ。でも週間天気予報はあまり当てにならない。ましてや、山の天気は変わりやすい。と自分を慰めているうちに、天気予報はだんだん上り坂になり、休暇を終えてみると結局全日雨になったのは1日だけ。着いた日は真夏のような暑さだったし、最後の土曜日もまた汗をかきながらのハイキングになった。

到着日は催し物があって車両通行止めになるというので早めにグリンデルワルトに到着。トライヒラーと呼ばれるカウベルを鳴らす団体がいくつも集まってパレード

ロープウェイに乗ってフィルストまで行き、そこから1時間くらい歩くともうバッハアルプゼー。この辺りでは牛もたくさん放牧されていて、アルプケーゼと呼ばれる高山で作るチーズも作られている

かの有名なアイガー北壁、メンヒ、ユングフラウを目の前にかしこまるクライネシャイデック

行き先はベルナーオーバーラントのグリンデルワルト。30~40年前は日本人観光客であふれかえっていた場所だ。今はインドや中国、韓国、中東からの観光客が多そう。出発する数日前に、国営テレビのある番組でちょうどグリンデルワルトやインターラーケンのオーバーツーリズムについて報道していた。その中で、グリンデルワルトに住むある高齢の女性が「日本人たちが勝手に私の庭に入り込んで、写真を撮ったりしていくのよ!」と怒っていた。でも、それを聞いた私も怒った。それは絶対に日本人じゃないと思ったからだ。その時は、今の円安じゃあ誰も日本から観光に来ないよ、と思ったし、来ていても日本人はまずそんな無礼なことはしない。と思う。長年グリンデルワルトに住んでいるのなら、そのくらいのことは知っていて欲しい、と思った。

ブスアルプまでバスで上り、帰りは徒歩で。あちこちでまだ牛がのどかに草を食んでいる

ブルーベリーかな?葉っぱが赤く色づいて美しい

そういう話をホリデーアパートの家主の女性にしたら、彼女は「私たちは日本人と他のアジア人を区別してるのよ」と言う。正直、嬉しかった。

話は少し飛んで、今週は泊りで3日間、毎年恒例のフォレスター研修の仕事へ行っていたのだけれど、そこでも同じような話を聞いた。いつもお世話になるドライバーさんと雑談していたら、彼もやっぱり日本人はとてもきちんとしていて、ほかのアジア人と全然違うと感心していたのだ。私から見ても、若い人もみんな礼儀正しいし、レスペクトを感じる。

さて、話をグリンデルワルトに戻すと、初外食の夕食は村はずれにある山小屋風の小さなレストランでピザを注文。丁寧に手作りしているのが分かる品で、応対もよかった。次の日はインドレストランがあるというのでそこへ行ってみた。で、がっくり。まさに観光地の味と対応。やっぱり国際的な観光地ではこんなものか…と残念に思ったけれど、その後もいくつかレストランに入った後の感想としては、ここ以外はどこも美味しく、親切な応対だった。例の家主さんにインドレストランの話をしたら、顔をしかめて、定期的に店で働く人が変わるのよねと言う。人材をインドから一定期間連れてくるのだろう。スイスにあるイタリアンレストランではウエイターが全員イタリア人ということも少なくないけれど、だいたいみんな愛想がいいし、もちろん美味しい。ここのインドレストランでは人がスレているというか、仕事に対する情熱が少しも感じられなかった。

グリンデルワルト周辺では、山の中腹やてっぺんにあるレストランでも、えっ!と思うようなハイレベルもあり、意外な一面を垣間見た。交通機関で簡単に行けるクライネシャイデックやメンリッヒェン周辺は観光客が多くにぎやかだが、反対側は日本によくあるような人工物に頼る観光地になってしまったフィルスト周辺を除けば、ブスアルプやグローセシャイデックは静かで、のんびりとハイキングを楽しめる。

1週間たっぷり歩いて家に戻り、もう1週間自宅でのんびり過ごしたかったけれど、フォレスター研修の前に片づけなければならない仕事が2つできて、結局ほぼPCにかじりつきっぱなしだった。それを片付けた後は研修の準備。そうしている間になんだか体調がおかしくなり、食事の量を抑え、横になったりして体と頭を休めるようにし、何とか研修に向けて出発。そういう話を研修の後半を担当するもう1人の通訳の女性にしたら、翻訳って神経使うんだねぇ、と言われ、今まで考えたこともなかったけれど、時間がかなり限られると、なるほど確かにそうかもしれない。

今年の10月初旬は寒く、雨も多い。研修で学生のみなさんも体調を崩さないか、ちょっと心配だ。まぁ、私よりいくつも若いから大丈夫かな。でも、30度の日本から10度のスイスへ、そしてまた1週間後には30度の日本へ、はキツそうだ。昨日は森も北風が強かったかもしれない。前半は土砂降りのときもあった。今はみなさん、もう帰りの飛行機の中。1週間のスケジュールを無事終え、ほっとしている頃かな。お疲れさまでした。

スイス一のっぽのダグラスを見に