新鮮な歯医者さんとの会話

秋休みは広々とした環境の中にある、朝食も夕食も外のテーブルで取れるフィンカでゆったりと過ごしたせいか、帰ってから自宅のキッチンの使い勝手さえ忘れてしまうほどリラックスできたようだった。日本では1週間の休暇でも長い方だと思うけれど、スイスでは2週間、長いと3週間休みを取ることもある。これまでは2週間くらいどこかで過ごすと本当に頭を切り替えることができ、心も落ち着くと感じていた。マヨルカで過ごしたのは1週間きりだったのに、なぜあれほどリラックスできたのか。鳥のさえずりを聞きながら、そして朝陽や夕陽、星や月を眺めながら、朝食や夕食を取り、昼間は海で泳ぎ、山の中を歩き回ったせいなのか。これも自然の恵みなのだろう。

マヨルカではサイクリングも盛ん。くねくねした山道を自転車で走る人を避けながら車で山の中に入り、印象的な風景を楽しみながらハイキング

休暇から戻り、おそらく今年最後と思われる通訳の仕事を済ませた後は、歯医者さん通い。その昔、夫一家がお世話になっていた男性の歯医者さんが引退し、その後、その場所を引き継いだ若い女性歯医者さんにずっと歯の治療をしてもらっている。歯に衣を着せず、はっきりとした考えを持つ、自分にも人にも厳しい美人だ。

例えば美容院ではカットしてもらっている間ずっとおしゃべりができるけれど、考えてみたら歯医者さんとはあまりおしゃべりできない。お医者さんは話せるけれど、口をあんぐりと開けている患者は話せない。これまでほとんどおしゃべりしてこなかったけれど、あることをきっかけに先日は30分くらいいろいろと話をした。

彼女は厳しい歯医者さんだが、(だから?)腕はいい。私の歯はあまり丈夫ではなさそうなので、死ぬまで彼女に面倒を見てもらいたいと密かに思っていた。なのに、彼女は来年前半くらいで引退するという。デジタル化や人手不足で、個人で小さな歯科医院を経営していく負担が増すばかりなのだそうだ。彼女はおそらく完璧主義者なので、時間を気にせず丁寧な治療をする。妥協を許さないから、その分もちろん自分に負担をかけているのだと思う。指や手が痛み、心発作にも何回か襲われた。この仕事が好きで、本当は定年近くまでもう少し働きたいけれど、もう体や心がついていかない。そんな話や、育った家庭環境、パートナー関係から今後の社会に対する見方まで、いろんな話をしてくれた。そして、ジョークを言い、明るく笑った。そんなことはこれまでにほとんどなかったので、何となく嬉しい気分になり、あちこち麻酔を打たれた口を歪ませて、私も笑うのだった。

キッチンの前の草原はもういつも朝靄の中

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