月: 2023年10月

5年ぶりの搭乗

スイスの今年の夏は暑く、長かった。

まだ夏を思わせる10月半ば、5年ぶりに飛行機に乗った。目指した先は地中海に浮かぶ小島マヨルカ。この島の今年の夏も暑かったらしい。そして10月だというのに海水浴もまだまだできるし、起伏の激しい山岳地のハイキングでは、体中べとべとになるくらい汗をかくほどの陽気だった。さすがに今週くらいから20度を少し上回るくらいまで気温が下がるようだけれど。宿が取れなかったので、スイスの秋休みにかかってしまう時期になってしまったけれど、タイミングとしては悪くなかったのかも。5年前、10月初旬に行ったときは寒くてとても海には入れなかったのに。

前回、前々回は義妹一家や義母も一緒で、大きなフィンカを借りて、子どもたちも周りを気にすることなくはしゃぎまわった。今回は2人だけだったので、小さなフィンカを借りた。フィンカというのは元農家を改造した一軒家で、たいていプールもついている。元農家なので海辺ではなく、耕作地の真ん中にあるからだろう。周囲にはほかのフィンカもあるけれど、家の周りにはレモンやイチジク、オリーブの木などが生えている広々とした土地があるので、人影は見えない。隣りの犬の吠える声が聞こえてくるだけだ。

フィンカというのは大きな家ばかりだと思っていたので、2人用のものがあると知って驚いた。入り口を入るとすぐにキッチンとリビングがあり、その向こうにオープンのトイレとシャワールーム、一番奥に寝室がある。外側にもトイレが1つあるので便利だった。洗濯機、ガスグリルもあり、長期の休暇もゆっくりと楽しめる。

オーナーはマヨルカ人夫妻なのだが、男性はドイツ語ぺらぺらで、お客さんはドイツ人かスイス人かオーストリア人だけだという。彼自身、ドイツで働いていたこともあるというけれど、ドイツ語が本当にうまい!うらやましい…。ホスピタリティもすばらしく、新鮮な果物を山盛り用意してくれていた。羊乳ヨーグルトを探し回ってどうしても見つからず、やむなく相談したら、彼がここならあるだろうと思ったお店に電話までして確認してくれた。

庭にある小さいプールで何度もターンを繰り返しながら泳ぎ、朝食も夕食も外のテーブルで鳥の鳴き声を聞きながら取り、ゆったりと過ごすことができた。が!唯一の難点は、蚊!網戸があるドアや窓もあるのだけれど、入口のドアには網戸がなく、おそらくここから侵入してきたのだろう。寝ている耳元でブンブン飛び回り、顔から足の指まで至る所を刺された。昼間でも、お店の中でも、あらゆる場所にいて、気がつくと痒い。刺された瞬間はわからないようだ。日本の蚊とは違うのだろう。すぐに痒みが収まるものもあれば、今もまだ痒いものもある。スイスに帰ってきたら10℃くらい気温の差があったけれど、蚊がいなくなっているのは嬉しかった。

あちこちで見かけたピンクの花。ブーゲンビリア以外で唯一まだ咲いていた花かも

石を積んだ塀はマヨルカのいたるところにある。色も積み重ね方も芸術的

 

終わらぬ夏

…とはいえ、さすがに朝晩は冷え込み、秋特有の朝靄も出だした。真夏に一時、雨と低温が続いたけれど、その後はときどき雨をもたらしながらも晴天が続き、今ももう10月半ばに近づこうとしているのに昼間は半袖でも十分という暑さだ。こんなことはスイスに住んで以来、初めてではなかろうか。今年は嵐が少なかったけれど、ここ数年、強風のときはその強さが増していることも実感している。温暖化は確実に進んでいるのだ。

夏の間は朝早くウォーキングに出ると本当に気持ち良いのだけれど、この夏はボリュームのある翻訳の仕事がいくつかあり、しかも納期が少々厳しかったので、新聞も読まず、ずっとPCの前に張り付くことが多かった。その仕事が終わり、ちょっと一息ついたら今度は秋の視察団のシーズンに移行。環境専門家の友人のお手伝いや毎年恒例になった研修などで、川やら森やらを汗を拭き拭き歩き回ってきた。コロナ前からウォーキングを始めて野道や森の中を歩くことが増え、太陽が出ていると外に出なきゃとうずうずするようになったので、こういう仕事は嬉しい。視察団の皆さんも出迎えてくれる人々も、みな親切でユーモアたっぷりでよく笑った。通訳はうまいとは言えないけれど、普段うちに閉じこもって1人で仕事をしているので、いろいろな人に出会い、いろんなことを実際に目にすることができる場は、私にとってもとても貴重だ。

10月最後の週末には夏時間も終わり、おそらく日中の気温もずいぶん下がることだろう。仕事に追われることが減ったら、また野道を歩き、キッチンで納豆やらジャムやらを作り、日の出や日の入り、星空を眺めてゆったりと過ごそうか。

当たり前のことのようだけれど、とても恵まれたことに違いない。