災い転じて福となす

ヨーロッパは節電の波に飲み込まれようとしている。ウクライナ侵攻と猛暑・寡雨の夏に端を発するエネルギー不足でこの冬は厳しくなるとの予想がされており、各国政府は対策に追われている。

スイスも例外ではなく、連日、新聞やテレビでは節電に関するニュースが絶えない。スイス政府自ら国民に節電・節水を訴え、具体的には何をすればいいのかという細かい対策も発表した。「人がいない場所の電気は消す」とか「室内の温度を下げる」とか「体を洗っている時はシャワーを止める」とか、なんだか当たり前のこともたくさん掲げられている。こんなことまで言わなければならないということは、こういうことをやっている人が多いということだろう。なんと恵まれた環境なのだろうと、逆に思う。

私は明治生まれの祖父や大正生まれの祖母と一緒に暮らしていた。比較的恵まれた環境に育ったとは思うけれど、決して贅沢はしていなかった。私のちびちびした性格もあるのだろうが、祖父母と一緒に育ったことも、あまり無駄遣いをしないようにと思う人間になったことに大きく関わっているような気がする。

今、新聞やテレビが訴えている行動は、本当は節制でもなんでもなく、ごく当たり前のことなのではないか。有限の資源を無駄に使うこと自体が誤りなのだから。

冬にセントラルヒーティングが止まるかもしれないからと、単体の暖房器具や暖炉用の薪を買ったりする人が増えているという。危機感が広がり出している。自然の脅威を見せつけられたコロナ・パンデミックが少し収まった後の今回の危機は、均衡を失った自然の歪みに人為的なものも加わって発生したものだ。いずれにしても、今後は今以上に電気が必要になる。今こそ我が身を振り返り、普通に倹約をする生活に立ち戻る絶好の機会なのではないだろうか。モノがあふれた世の中でまだモノを追い続け、大切なものを見失った私たちを立ち止まらせてくれるときではないのだろうか。

0 comments:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください