ドイツ語に「Aprilwetter」ということばがある。日本の「女心と秋の空」に当たることばだ。でも、季節がまるで違う。「April」は「4月」、「Wetter」は「天気」を意味するので、直訳すれば「4月の天気」。この辺りでは、秋よりも春の天気の方が変わりやすい。1日のうちに1年のあらゆる気象が起こると言っても過言ではない。一晩で天気がころっと変わり、気温差が10℃以上になることも。そして、例年と言っていいほど3月くらいに暖かくなり、イースターの頃に寒の戻りがある。
今年のイースターは比較的安定していた。寒さに襲われたのは、ちょうどイースターが過ぎてから。明け方は零下になり、北風がびゅうびゅう吹く中、雪も積もるほど降った。
その少し前、3月は記録的に暖かかった(暑いと言った方が正しいかも)。そしてまた、イースター明けの寒さも記録的だった。桜の開花は例年よりずいぶん早く、寒波が押し寄せたときにはほぼ満開状態。実がなる奥の方まで凍ってしまい、地域によっては8割がたが凍結してしまったという。今年はサクランボが不作となりそうだ。
命が芽吹く春には、いろんな野草も顔を出す。今はもう花が咲いてしまったかもしれないけれど、川沿いを散歩するとよく行者ニンニクがわさわさと生えている。3月に、上階に住むカップルが近くの湖で摘んだものをお裾分けしてくれた。採り立てをバジルのようにペーストにしてスパゲティに絡めていただいたら、強烈に刺激的な味でひどく驚いた。そのほか、スイスには蕗もあるそうだ。海育ちの私は山菜にはあまり馴染みがないので、詳しいことはよく知らないけれど。私の今の楽しみは、せいぜいタンポポの葉のお浸しといったところか。