十四夜の散歩

我が家はケンカは少ない方だと思う。それでも、やっぱり夫婦で互いに腹立たしい思いをすることがある。私は亡父に似て、怒ると話せなくなる。もやもやした気持ちで一緒にソファに座り、黙ってテレビを眺めているのも嫌なので、私は仕事部屋に引きこもったり、一人で散歩に出たりする。

先日も夕食時にちょっとした諍いになり、洗い物を済ませてから一人家を出た。夜は冷えると思い、ヒートテックを着込み、厚いコートに帽子、そして手袋をはめた。

外に出ると、明るい。近所の多すぎるほどのクリスマスイルミネーションのせいかと思ったけれど、空を見上げると満月に近いお月様が煌々と辺りを照らしていた。これなら、夜道の一人歩きも怖くなさそうだ。いつも歩く野道へと向かう。影ができるほどの明るさの中、速足でどんどん歩く。ときどき空を見上げ、星を仰ぎ見る。モミ林のシルエットが美しい。

夏ならまだジョギングしたり犬の散歩をしたりする人がいそうだが、4時半ごろに日が没する今の時期に畑道を歩く人はいない。林の外れに差し掛かり、空が暗くなるとちょっと怖い。野道に別れを告げて、農家の間を抜け、車道に出た。馬が二匹、外に出ていた。白っぽい方の馬が私を見ている。そばに寄って、しばらく見つめ合う。何だか悲しくなり、涙が出た。今年あったいろいろな出来事、まだ終わっていない出来事が心の中に折り重なっている。ときどき、そういうものを吐き出さないと。

「もう行くね」と声をかけてまた歩き出す。センターラインもない細い車道は一台も車が通らないまま。静かな夜。風もなく、歩いていると暑いくらいだ。村の中心を抜けて駅まで歩き、1時間半経った頃に家に戻った。

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