月: 2020年5月

それでも時間は過ぎていく

この2カ月間、振り返ると時間の感覚がまったくなかったような気がする。毎日を緊張の中で過ごすうちに、いつの間にか季節が変わっていた。

 スイスにコロナがやってきて、ロックダウンが始まり、今、徐々に解除されている。世間はコロナ一色だったけれど、我が家はそれどころではなかった。いつになったら心から安心できる日が来るのか、まったくわからなくなった。恐怖と不安と寂莫感にさいなまされる日々が続いた。今は少しだけ安堵できるようになったけれど、まだまだ安心はできない。

その間、いろいろな人から励ましや慰めのメッセージ、電話、花束、手作りの差し入れ、協力をいただき、本当に力づけられた。自分も渦の中で苦しんでいるのに、温かいことばをくれた人もいた。日本の家族の支えも大きかった。

苦しみというものは、その人本人にしかわからないものだ。周りはそれを想像はできても、本当にはわからない。今回、そのことが身に染みた。経験次第で、想像がより豊かに、本人が感じている痛みにより近くなることはあっても、その人の経験はその人にしかできないのだから。感じ方も人それぞれで異なる。「こうしてくれたら、嬉しいのにな」と思う行動も、人によってさまざまだろう。

私は想像力に乏しいので、これまでたぶん、人の苦しみを本当に思いやるということができなかったように思う。これからできるかどうかも疑わしい。でも、この数カ月間で、自分がどんな人間なのか少しわかったような気がする。