今やパンデミック宣言も間近かと思われるコロナウイルスの脅威は、スイスもなめ回し出した。ヨーロッパで現在、最多の感染者を出しているイタリアに接するスイス南部で、今週初めに患者が一人出た途端、あれよあれよという間にスイス全土に広がった。と言っても、その数はまだ20人に満たないし、死者も出ていない。連邦当局は予測は一切発表していないけれど、これから感染者の数がうなぎ上りになることはおそらく予想していることだろう。状況に応じた対策を取る、病院の手配に抜かりはない、と強調しているけれど、昨日から警戒態勢に入った。
現在奨励されているのは、とにかく手洗い。電車やバスから降りたら携帯用消毒液で手を消毒、家に帰ったら30秒間液体石鹸で手を洗う。公衆トイレを出るときは、ドアを手で開けずに肘を使う。マスクは効果を実証する研究がないため、奨励しない。予防というより、どちらかというと患者が他の人に感染させないために使うものだという見解だ。現在、町でもマスクを着けている人は見ない。キャンペーンではほかに、咳やくしゃみをするときはティッシュを使うか、ないときは肘で隠してする。咳が出るときは家から出ない、などといったことがらが奨励されている。そういえば、うがいの奨励もない。
警戒態勢に入ったことで、1000人以上が集まるイベントが中止になった。ジュネーブのモーターショーやバーゼルの時計見本市「バーゼルワールド」、サッカーの試合、コンサートなど、3月15日まですべて中止もしくは延期だ。特に国際見本市など、外国からも人が訪れる場合は、感染例が発覚したときにルートを辿れなくなるというのがその理由。アイスホッケーはもうすぐシーズンが終わるので、観客なしで試合を続けている。何をとっても経済的な損失は大きい。予定されていた舞台が中止となったコメディアンが、保険も損失をカバーしてくれないし、国も補償してくれないので、すべて自分たちで負担しなくてはならず、納得がいかないと、昨夜あるディスカッション番組で話していた。
日本ではトイレットペーパーが売り切れたそうだが、スイスのお店からは缶詰が消えつつある。野菜の缶詰を非常食用に買い溜めしているよう。あとはもちろん消毒液。マスクも売り切れていると聞いたけれど、いったい誰が買っているのか。かけている人がいないのに……。
団体で押し寄せていた中国人の姿が消えて、観光業も苦しそうだ。これからは国内の移動も少なくなるかもしれない。出張を止めさせたり、会議を見送ったりする会社も多いと聞く。
異常に暖かい冬に新しいウイルス。本当の春が来る頃には、峠を越していますように。
コメントを残す