月: 2007年8月

YAMATO

引っ越していった数日後、シュールが行方不明になった。 元お隣さんから何も連絡がないから、おそらくシュールはまだ見つからないのだろう。もう年なのに、今ごろ、どこでどうしているんだろう。誰か親切な人に見 つけてもらえるといいんだけど。でも、シュールの首輪には住所が書かれている。拾われたら、きっと連絡が来るはずなのに。夫も毎日「連絡あった?」と聞 く。悲しいけど、ない。

昨日はバーゼルへ和太鼓の「YAMATO」の公演を観に行った。その前に仕事でちょっとご一緒したので、中国野菜とかの差し入れを持っていった。彼らは世 界ツアー中もずっと自炊なのだ。開演の20分くらい前に会場に着き、運良くプロダクションの人に会ったので、お願いして控え室の前まで連れてってもらった けど、やっぱり時間がなくて公演のあとに手渡すことにした。本番前の緊張の時間にお邪魔して申し訳ない…、と自分の行動を反省。

正直、何も知らなかったときは「ああ、またトレンドを追うグループか」と思っていたけれど、YAMATOのウェブサイト(http://www.yamato.jp/jp/main/main-flame.htm)を見て、全然そうではないことを知った。ひょんなことから生まれた名もないグループが、あれよあれよという間にここまで成長してしまったという感じ。でも、舞台はすばらしい。会場は盛り上がる一方だった。

和太鼓はもともと好きな方。日本人にとっては、心の奥深くまで染み入る音色だ。メンバーの若者たちはみんな元気いっぱい。そして、礼儀正しい。さわやか。 個人的に質問したいことなんかもたくさんあったけど、2時間後にはスイス最後の公演を控えていたし、名残惜しかったけれどチューリヒへ戻った。レストラン で夕食を食べながら、「彼らはまた舞台で飛び跳ねているんだ~。なんてタフ!」と密かに感心。そこまでタフにはなれないけれど、彼らの舞台で私もたくさん 元気をもらった。

今ごろは荷物をまとめて次の公演地、フランクフルトへ向かっているのかな。

不憫なモグリ

昨日は小さなお別れがあった。5人家族のお隣さんの引っ越しが一昨日終わり、飼い猫のシュールだけ、新居に場所を作ってから奥さんが引き取りに来た。 シュールは時どきモグリのエサを食べてしまうけど、モグリが生まれたときからず~っと一緒にいて、モグリにとってはお父さんみたいな存在だったに違いな い。もう10歳を過ぎているから木登りはしないけれど、よくモグリと追いかけっこを楽しんでいた。我が家の仕事部屋や玄関前の石畳の上で、2匹して寝そ べっていた。私たちがモグリと散歩に行くと、時どきシュールもあとを追ってきた。ああ、こう書いていても悲しくなる。

引っ越しても人間同士はいつかまた会える。人間は自分たちの都合で引っ越して、子どもですらも何かあったら言葉や行動でその気持ちを周囲にわかってもらえ る。でも、シュールは…。何も知らないまま、突然まったく知らない土地へ連れて行かれたシュール、元気でいてね…。ちゃんとエサを食べてね。新しい友達を また見つけてね。

お父さん兼大親友をなくしたモグリのこともとっても心配。彼は理解できるだろうか。お隣一家がよそに引っ越してしまったことを。シュールも行かざるを得な かったことを。もう二度とシュールと転げまわれないことを。シュールがオリに入れられて最後のお別れに来たとき、モグリもそばにいた。また病院に行くのか と思っていただろうか。それとも、やっぱり何か感じ取っていただろうか。モグリが、シュールがかわいそうでならない。