初めてのアシスト

またしても初めての経験。コミュニケーション・アシスタント(略称KA)として初めて泊りがけで重度の視覚聴覚障害者に付き添ってきた。場所はオーストリアのとあるウエルネスホテル。5泊6日の(彼女にとっての)休暇だった。

朝霧に沈むロイテ(Reuthe)の谷

朝霧に沈むロイテ(Reuthe)の谷

とはいえ、彼女もKAと二人きりで何泊もの旅行に出るのは初めて。光を完全に失い、聴力もほとんど無くしてから10年が経つが、私のような半しろうとでい いのだろうか…と出発前から私はかなり緊張していた。KAとして随伴するからには、彼女にできるだけリラックスし、できるだけ楽しんで欲しい。そのお手伝 いがどこまでできるか、不安は大きかった。出発前に一度買い物などの随伴をしたのだが、そのときに彼女はそんな私の心を見透かすかのように「今度の旅行、 大丈夫?すぐにノックアウト状態になりそうな感じがするけど…」と言った。私は正直に「初めてのことだからドンと胸を叩いて任せてよ!とは言えない。で も、チャンスを与えてくれるのならやってみたい」と答えた。しばらくお互い、腹を割って話し合った末、「大丈夫!二人でやってみよう!」ということになっ たのだった。

帰宅の日。秋を前に、山から谷へ下りてくる牛の群れがいっぱい

帰宅の日。秋を前に、山から谷へ下りてくる牛の群れがいっぱい

泊まった先は4つ星のホテルだったので、何もかも言うことなし。フロントでもレストランでもみなとても親切だった。そして、何よりも食事が最高。朝食の ビュッフェから昼食、おやつのさまざまなケーキ、そして夕食。ほとんど食べてばかりだったかも。オーストリア出身の彼女もほとんど悲鳴を上げそうなくらい の喜びよう。彼女いわく、典型的なオーストリアの食事を繊細にしたメニューだそうだ。サラダビュッフェのサラダも毎日食べても全然飽きない。3つあるプー ルもジャグジーも大いに楽しめるし、そのほかいろんなセラピーも受けられる。周りは湿地帯で散歩に適している。近所の村まで歩いて1時間くらいかな。ちょ うどいい距離だ。

「寝ているときしかリラックスできない」と言う彼女は、このホテル滞在で本当に体を休めることはできなかったけれど、私と一緒に楽しい時間を過ごすことが できた、とうれしいフィードバックをくれた。ほぼ1週間近くも一人の人に付きっ切りでいるのは結構ヘビーだ。この数日間で、すべてのシチュエーションを経 験したような気さえする。体の疲れだけではなく、精神的な疲れも大きい。彼女の苦しみ、悲しみもすべて一身に受け取ってしまうせいだろう。家に帰ってきた とき、無性に泣きたくなっている自分に気がついた。

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