月: 2006年6月

二人の母と

約1ヶ月の休暇もあっという間に、でも楽しく、そしてケガも病気もなく過ぎた。

去年辺りから「そろそろ日本に帰りたいなあ」と思っていた。でも、いつになったら帰ることができるやら、今年の春になってもほとんど見当がついていなかっ た。それなのに、いったん決まるとものごとの進むことの早いこと早いこと。夫の仕事の都合で5月の半ば過ぎに帰国が決定。これまで日本行きを何度か誘って もうやむやな返事しかくれなかった義母も、数日で決心。そして、数年間、来瑞を悩んでいた私の母も、遠く離れた日本でとうとうスイス旅行を決心。ああ、素晴らしい!

Kiyomizudera3人で周った日本はとても楽しかった。そして、何より驚いたのが新緑の日本の美しさと日本に住む人々の礼儀正しさ。数年前は眉をひそめるような対応が多 かったレストランの従業員も、今回はみなとても親切でサービスもバツグン。義母は、テーブルに着くたびに無料で出てくるおいしい水(ほとんどの水は塩素の 匂いがしなかった)やおしぼりに感激していた。実家に帰るために利用する近鉄の車掌さんにいたっては、車両に出入りするたびにお辞儀をする。込み合う電車 では、ちょっと体がぶつかると「すみません」と謝ってくれる。日本ってこんなに素晴らしい国だったんだ、と今回の帰省で日本をものすごく見直した。

そして、スイスに戻る道すがら、今度は母も加わって4人の旅、名古屋発パリ経由。行きも同じだったが、パリではにこやかで礼儀正しい日本から来た私たちにはますます腹の立つことばかり。人という人はみな無愛想で、意地悪をしているんじゃないかとすら思うほど。カフェの中もごみだらけ。義母は怒りやら情けなさやらが混じるため息をつく。

Ebenalpフランスびいきの人には悪いけれど、私は17年前からフランスにはあまりいい印象をもっていない。まだ結婚前、夫と二人でチューリヒからパリへ電車で行っ たとき、フランスの国境で私は日本のパスポートを取り上げられ、簡単な身体検査を行われた。長い間待ってやっとパスポートが帰ってきたときも、ツンとそれ を差し出すだけ。かといって、荷物にはまったく手を触れようとしなかったと記憶する。私は怒りで涙が出そうだった。あとで夫が、「傲慢なやつらだよね。 きっと暇だったんで、キミをもてあそんだんだよ」と言う。私もそのとおりだと思った。今回のパリでの手荷物検査も一見厳しいようで実はいい加減だったし。

義母との日本旅行、続いて母のスイス滞在。そう聞いた友人はみな口をそろえて「そりゃ、たいへんだね~」と言ったが、思ったよりもたいへんではなく、とて も楽しく過ごした。きっと、なんにでも興味を示して楽しむのがうまい義母と、同じく小さなことにはこだわらず、受け入れるのがうまい楽しみ上手の母のおか げだったのだろう。そして、田舎の家族や親戚の心のこもった待遇、また母がこちらで受けた歓待にもとてもとても感謝している。あ、もちろん、気立ての良い夫にも心から感謝していますよ。