月: 2005年5月

コミュニケーション・アシスタント養成コース

「ようやく」というか「もう」というか、昨日、「コミュニケーション・アシスタント」養成コースが始まった。朝8時半前に手話の先生ノーベルトと手話コー スの仲間ドリスと中央駅で待ち合わせ。私が一番に着いたのだが、すぐ目の前に手話で会話をしている若者がたむろっている。「話しか けてみたいなあ」と彼らのようすを伺っているところにノーベルトが現れた。彼はやっぱりその中の数人を知っている。学校のスポーツの日で、みんなでどこか へ出かけるのだそうだ。中央駅ではときどき手話で会話をしている若者を見かける。でも、私はあまり中央駅で乗り降りしないので、こういう機会はあまりな い。これからは勇気を出して話しかけなくちゃ。

ドリスと三人、隣の州まで電車で行って目的地で降りると、毎年、ろうのお年寄りの休暇旅行で一緒に付き添いをする難聴のカティも同じ電車から降りてきた。 一緒に話している女性とは電車の中で偶然となりになり、彼女が目を通している書類から同じコースへいくことがわかって手話を交えておしゃべりをしてきたの だそうだ。その女性は手話通訳をしているので、手話が抜群にうまい。いいなあ、私もあんなふうに手話が使えたらなあ…。

養成コースの参加者は全部で21人。ろう者が3人、難聴者が3人。男性も4人いる。でも、4人とも聴覚障害者だ。コースの責任者の一人はアッシャー症候群 のため、視界が極端に狭く、耳は聞こえない。だから、盲導犬の「オリオン」もいつもお供でそばにいる。コースはスイスドイツ語と手話の両方で行われる。こ れが楽しみだった。手話を習う絶好のチャンス!仕事で居合わせる手話通訳(2人)のほかにも参加者として通訳の女性も2人いるので、休憩時間なども手話が 飛び交う。うれしい~。

昨日は趣向を凝らした自己紹介のあと、視覚・聴覚障害者向けのコミュニケーション方法を学んだが、手話のほかにもいろいろな手段があるのに驚いた。参加者 の中には、ウルズィ(ドレーシャイベ参照、彼女もこのコースに参加)のようにもうすでにボランティアで視聴覚障害者の付き添いをしている人もたくさんい る。たぶん、私が一番無知だろう。でも、手話ができない人も多い。スイスドイツ語を話さないのは、私ともう一人のドイツ人女性だけ。だけど、みんなすぐに 打ち解けていい雰囲気だ。きっと福祉関係に関心のある人が集まっているせいだろう。

昨日家に戻ってからいまになってもまだ、昨日一日がなんだか日常から浮き上がっていて、この日をどう整理したらいいのかわからないような、ちょっと変な気 分が続いている。語学以外の講義を受けたのは初めてだし、手話とスイスドイツ語の両方で講義を受けたのも初めて。チューリヒ州以外の場所でのコースという のも思えばこれまでになかったし、手話で一日おしゃべりをする(もちろん、ドリスとかとのおしゃべりはドイツ語だけど)なんてこともそうあることじゃな い。次のコースは6月の末。それまでに心のどこかに収納場所を見つけられるかな。

モグリの友だち

昨日の日曜日、少し晴れ間が見えたのでまた3人でお散歩。子どもの遊び場でモグリと戯れていたら、すぐ近くのアパートから女の人が出てきた。3月の半ばに バス停で話しかけてきた、あの女性だった(2005年3月18日参照)。私たちを見つけたので、本当に出てきてくれたのだ。以前、半年くらいスウェーデン の島で暮らしていたときに飼っていたネコも、喜んで散歩についてきていたという。しばらく雑談してから「それじゃあ」と帰りかけるので、「少し一緒に散歩 しませんか?そしたら、モグリも慣れるだろうし」と提案したが、いまは服用している薬のせいで日光を避けなければならないとのこと。じゃあまた今度、とい うことでお別れした。とてもやさしそうな感じのいい女性だ。私たちが家を空けるときにモグリを見る人がいなかったらいつでもどうぞ、ともおっしゃってくだ さった。彼女なら、きっとモグリとも意気投合するだろう。

先日、お昼過ぎに家に帰ってきたら知らないネコが留守宅に上がっていた。これまで見たこともないネコ。なんと、モグリものろのろと仕事部屋から出てきた。 どちらが先にいたのか知らないが、どうやらモグリはこのネコの侵入を防げなかったみたい。首輪をつけておらず、えさを欲しそうにしばらくうろうろしていた が、かといってべったりなつくわけでもない。半分追い出すような形で出て行ってもらった。夫に話すと「モグリの新しい彼女だったのかもしれないよ」

Mogli_auf_dem _Baumそ う、モグリには彼女がいた ― と私たちが勝手に言っているだけだけど。その彼女は、もう一匹の臆病なネコと小さなイヌと一緒に住んでいた。同じ敷地内 の、私たちの裏手にあるアパートに。その家族は2階に住んでいて、長い長いネコ用の階段がしつらえられていた。モグリはいつの間にか、勝手にその階段を上 がっておじゃまするようになっていたらしい。そこのイヌとも仲良くなり、一時は住み着いてしまうほど(そういえば、一時期、全然帰ってこないときがあった のよね)みんなと仲良くなった。ところがおととしの秋、その一家は近くに家を建てて引っ越してしまった。奥さんはモグリと別れることをとても寂しく思って 「モグリも連れて行っちゃおうかしら」なんて、冗談交じりに言っていた(冗談でよかった…)。その後、モグリもなんとなく寂しそうで、かわいそうに思った ものだ。

でも、モグリはほかにもお友達がたくさんいる。もう少し奥のアパートでネコを飼っているオーストリアの女性もモグリの訪問を楽しみにしているようだし、向 かいのアパートにはモグリ大好き青年が住んでいる。冬のある日、モグリと森へ散歩に行った帰り、反対側の歩道にイヌを連れた女性が立っていてこちらを見て いる。モグリに「行っちゃうまで待ってようね」なんて話していたら、その女性がモグリに向かって「そんなところで何やってんの」と言うではないか。私はあ わてて「ときどき一緒に散歩するんですよ。好きなんです、モグリ」と言うと、彼女は「あら、お宅のネコなの。うちの犬はよく知っていますよ」なあ~んだ。 じゃあ、道路を渡ってうちへ帰ろう。彼女はモグリになんだか別の名前までつけていたよう。

以前、「スイス人の知り合いってなかなかできないよね~」という話題のときに「子どもと犬がいれば簡単よ」と友人に言われ、「ふ~ん、そうなのか」と思っ ていたけど、モグリもなかなか。おかげで思いがけない会話を楽しませていただいている。どこかで悪さもしているかもしれないが、人の心を和ませてくれるモ グリに感謝。

やることがない?

今日は子どもの日なんだ。この日付を書いてはじめて気がついた。子どもがいないと、日本の祝日とはますます無縁になっていく。今年はこちらも祝日。キリス トが昇天した日である。キリスト教徒はやっぱり教会へ行くのかしらん。我が家も一応プロテスタントだけれど、自分たちの用で教会へ行ったことは一度もな い。式も日本の神社とこちらの役場の署名で済ませただけだし。

最近、ちょっとヒマ。これまで取り組んできたスイスに関する本を一通り訳し終え、先日、編集者に送ったばかり。ほかの翻訳もいま空いている。ホームページ もリニューアルし終わったし、マンガの方は日本からの連絡待ち。バルコニーにも先週末に花を植えたし、シソの種も小松菜の種ももう蒔いた。手話のコースは 終了、ドイツ語のコースは休み中。宿題ももうほとんど終えた。

そうだなあ、オーブンの中を掃除しなくちゃいけない。でもこれ、たいへん。

読みたい本は山ほどある。次に翻訳したい本もいま読んでいるところだ。これがまたなかなか面白い。友人・知人からは「またマイナーな本を…」と言われるかもしれないが。

私はやっぱり、翻訳をしていないと落ち着かないみたい。