イタリア人がうらやましい

イタリア人がうらやましい  ―  と思ったことがこれまでに2回ある。

一度目は、もう10年くらい前のこと。夫と二人で、週一回、銀細工のコースに通っていた。そこにイタリア人の中年男性が一人いた。みんなもう長くこのコースに通っている人たち ばかりで、何も知らない初心者は私たちだけだったと思う。このイタリア人の彼はもうかなりのベテランのようで、あちこちで人の手伝いばかりしていて、自分 の作品はほとんど作っていなかったんじゃなかったかな。見たことがないような気がする。彼がいないと、作業室がし~んとしている。彼が登場すると、いきな り雰囲気がラテン系に早変わりする。大きな声で、ドイツ語の間違いなんか「知ったことか」って感じで、とにかくペラペラペラペラ。このとき思った。

「彼の10分の1でいい、あの気さくさが欲しい」

2回 目はホヤホヤの今日のこと。あるスーパーで柿を選んでいた。そう!うれしいことに、数年前からスイスでも柿(やっぱりKAKIという)がお目見えするよう になっている。出荷元はイスラエルやイタリア。というわけで、今度はイタリア人の女性が登場。こちらもやっぱり中年。小柄の、いかにもイタリア人らしいおばちゃんだった。

スイスで売られている柿には2種類あって、ブヨブヨに熟した柿とナイフで皮をむくことができる固めの柿。日本では同じ柿をブヨブヨに熟すまで待つのだと思うが、私の父はこれが好きだった。でも、私の好みは固め。そういう中から選んでいたら、脇から「Nein, nein(ダメ、 ダメ、そんなの)」という声がする。そして、その声の主はブヨブヨ柿のパックを手に取って「こっちがいいのよ!そっちはダメ!」というではないか。やっぱ りブロークンジャーマンで。私も対抗して「でも、私、固いのが好きなの」「いや、こっちの方がね、栄養満点なのよ。1個食べれば、卵1個分とおんなじ栄養を取れるんだから!イタリアじゃあ、もうこればっかり山のように食べるのよ」私はこの思いがけない会話にうれしくなってニタニタ笑いながら、それでもやっぱり固めを離さない。

こんなことはスイスでは稀である。みんな、まじめな顔をしてさっさと買い物を済ませていく。だから思った。

「私もこんな明朗さが欲しい」

ことばが多少できなくても、知らない人にも気楽に話しかける。この土地では、かなりむずかしいことである。

Kaki

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