エンガディンの1週間

コロナの心配もまだ拭いきれない中、休暇用アパートをやっとのことで見つけて、大好きなエンガディンで1週間、夫と2人で頭と心を休めてきた。でも、それももう2週間以上前のことだ。もうすぐ秋休みが始まるので、今アパートを探すのはもっと困難だろう。人との接触を避けて、みんなアパートに泊まりたがるよう。

休み前の予報では、エンガディンの天気は今ひとつだった。確かに曇り空に覆われたり、雨に降られたりもしたけれど、思ったより好天に恵まれて、宿泊場所のシュクオール(Scuol)の周辺をてくてくと歩き回ることができた。

建物に施されたスグラフィットの装飾が美しい村々は、シュクオール周辺にいくつも点在する。どの村もイン川が流れる谷間から少し登ったところ、標高1000メートルちょっとのところにある。村から村へ通じる古い野道を歩いていると、どうしてこんなに高いところに村を作ったのだろうと疑問がわく。夫は「攻めにくいからじゃないか」と言う。

ところが、標高2000メートルくらいまで上り、その高さで谷を見下ろすように歩くと、村の位置はそれほど高くないと感じる。村から上にもまだまだ山はだが延びているのだ。見る位置、立つ位置によって、その比が大きく変わる。

今回はハイキング休暇だったけれど、私にはもう一つ、とても大切な目的があった。それは、去年テレビでふと目にした老齢のグラウビュンデンの画家、コンスタント・ケンツの作品を実際に見ることだった。

…とここまで書いて中断。いきなり忙しくなって、10日間くらい手を付けられずにいる間に、スイスのコロナ状況は激変し、感染者数が急上昇してしまった。もう秋休みも終わりに近い。終わった州もある。気温がぐっと下がって、帽子や手袋も必要なほどだ。コロナ疲れとこの気候の変化のせいだろう。

さて、話を戻してケンツさん。もう90歳を過ぎているからなのか、最近は展覧会を催していないようだ。彼はグラウビュンデン地方の建物にたくさんのスグラフィットを残し、公共の建物などの内部に壁画を描き、キャンバスにも抽象画を描いている。

ケンツさんが住むZuozの村の教会にある「命の木」のステンドグラス

できるなら彼のアトリエを訪ねて絵画を見せてもらいたいところだったけれど、そんなことができる状況ではないので、スグラフィットや外壁の装飾画を探して眺めるだけに終わった。それでも、実物を見ることができて、久しぶりに幸せなカルチャー的瞬間を味わった。建物を探しながら村中を歩く私に付き合ってくれた夫に感謝。

Ardezの村にある一般家屋。探し当てられた!

これは彼だけの作品か、弟との共同作品かと思われる。こんな家に住みたいなぁ

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