月: 2013年4月

お金の振子

この数日間、なんだかちょっと不思議な体験をしている。

まず先週の木曜日、本社でセミナーがありベルンまで出かけた。帰り道、いつも通り会社からベルン駅までトラム(路面電車)に乗ると、キセルの抜き打ち検査 があった。切符をちゃんと買っていたので、財布からさっとそれを取り出すと「これは古いですよ」。よく見ると、今朝ベルン駅から会社に行くときに買った切 符だった。次に財布からさっと取り出したのは、何かのレシート。あれあれ?

かばんの中をごそごそと探しても見当たらない。女性2人と一緒だったので、おしゃべりしていて注意散漫になっていたのかな。どこに切符を入れたのやら。そ れとも、切符を自販機から取り忘れたのかな。そうこうしているうちに降りる駅に着いてしまったので、検札官ともども下車。2人の女性は先に帰ってもらい、 私は2人のいかつい男性と一緒にその場に残る。

「もう一回探しますか?」「いや、もう十分探したんですよね」と言いつつ、あきらめきれずまだかばんの中をごそごそ。「現金なら100フラン(約1万 円)、振込みなら120フランの罰金です」。が~ん。とりあえず財布の中にはたまたま十分な金額のお金がある。で、「100フラン払います」。すると、 「身元を登録しますか?しませんか?すればナントカ、しなければナントカ……」。したときとしないときの最終的な違いがよくわからなかったので、「いい や、じゃあ登録します」。「では、乗った場所は?」「オストリンク」。答えながら、かばんの中から何かを出そうとまたごそごそすると、あった~!ちゃんと した切符が出てきた!喜び勇んで、検札官に渡す。「マダム、こういうことはもうちょっと早くしてもらわないと…」「でも、ご覧になってたでしょ?私がずっ とかばんの中を引っかき回してたのを」。2人のいかつい検札官は互いに顔を見合わせている。「私、もうチューリヒに帰らないといけないんです。行ってもい いですか?」。「……はい、どうぞ」。よかった、電車に間に合いそうだ。あ、そうそう100フラン100フラン。手を差し出して「100フランも返してく ださい」。満面に笑みを浮かべて「ありがとう!」。いかつい2人は100フラン取りそこなったけれど「よい夕べを!」と私を解放してくれた。

その後は100フランを無駄にせずに済んだ喜びでにやにやしつつ、ベルンの旧市街を疾走。汗をかきかき、電車には余裕で間に合った。

その翌日、プライベートの仕事があり、報酬の清算を現金で済ませて自宅に戻った。ところが、よく勘定するとなんだか計算が合わない。もしかしたら、私が勘 違いしてお釣りを100フラン多く渡してしまったのかも……。「あのときの100フランはやっぱりなくなる運命にあったんだ」と少しがっくり。でも、ちゃ んと切符を持っていたのに100フラン取られるよりも、楽しくお仕事をさせてもらったクライアントにお釣りを多めに渡してしまった方がずっといい。そう 思って、すぐに気を取り直した。

で、昨日の土曜日。亡くなった友人の夫と一緒に彼の甥が働いているガーデンセンターへ。夫も一緒に4人で2時間も寒空の下、いろいろと詳しい説明を受けな がら店内を案内してもらった。彼は私たちに、共通の友人と一緒に引っ越し祝いとしてアジサイを一株プレゼントしてくれることになっていたので、それを選び にいく目的もあった。私は白と青のアジサイを一株ずつ買うつもりだったのだが、夫は4株欲しいという。で、4株買って3株分は自分たちで払うつもりでい た。ほかにもいろいろと買い物をしてレジに行くと、彼はアジサイの分は全部持つと言う。「それはダメダメ」と言っても聞かない。結局、4株全部を買ってく れた。金額にすれば、この数日間の「損得」は「得」に傾くくらい。振り子があっちに揺れたりこっちに揺れたり。この後、また「損」の方に振れるのかなぁと 考えてしまうほどでした。