月: 2012年3月

温泉旅行

先週末は4日間あった。金曜日と翌月曜日も休みを取り、念願のヴァルス(Vals)の温泉へ行ってきた。といっても、ヴァルスに泊まれたのは金曜日の一泊だけ。後はもう満室だった。

Vals ThermeZumthor、ここではツムトール、日本ではズントーと呼ばれ るスイスの著名建築家が造った浴場は、普通の温泉とまるきり雰囲気が違う。明るくて広々とした浴場ではなく、温度の違うお湯が張られた小さな空間がいくつ かに仕切られている。一番大きな浴場のお湯は32度くらいだったかな。お湯はなんだかまったりとしていて、じっと浸かっていると、まるで滑らかな絹に全身 をくるんでいるような心地よさに包まれる。露天風呂では、太陽の光がうろこのような模様を描き出す。この日は雲ひとつない青空に恵まれた。

Eichhoernchen翌日はウインタースポーツが盛んなラークス/フリムス(Laax/Flims)へ。空は曇り出したが、ハイキングには問題なし。夜は泊まったガルニホテル のおススメで、ラークスの村の元郵便局だったレストランで食事。ここもほぼ予約で満席だったけれど、早い時間に行ったので何とか席を確保して、あちこちに 郵便局だった頃の名残が残る古い素敵な建物の中でおいしい食事に舌鼓を打った。シェフはアジア系が好きなのかレモングラスにレ ンコンをひっかけたデコレーションや、イタリア産の海草の炒め物なんかも出てきたり。おいしいとは聞いていたけれどサプライズだった。シェフ自らがメイン ディッシュを持ってきてくれたので、「このレンコンはどこで買ったんですか」と聞いたら「ああ、マーケットに行くと売ってるんだよ」だって。ええっ、オド ロキ。

EichhoernchenII日曜日はだいぶん雲が厚くなったので、もう一泊するのはやめて帰路に着いた。途中、時々行くレンツァハイデ(Lenzerheide)に寄って、氷が溶け出した湖の周りをいつものように一周。

湖畔の林の中にはリスの一家が棲んでいて、中にはすぐそばまで寄ってくる神経の太いリスもいる。私はなかなかその場を離れられず、さっさと歩を進める夫とはぐれてしまった。

散歩のあとは村のメイン通りを往復(10分もかからない)。私は石や木で作られた家が大好きなのだが、グラウビュンデン州の家もとても美しいと思う。窓が 深く引っ込んでいて、必ず大き目の窓と小さ目の窓が並んでいる。スクラフィットというこの地方に多く見られる装飾も美しい。この家はきれいな色に塗られて いるが、自然の木を活かした家も多く、それはそれでまたなんともいえない色合いの美しさだ。

Haus_Graubuendenついでに、月曜日には何をしたかというと、叔父に勧められたドイツの家具屋さんへと車を走らせた。気に入った家具は何一つ見つけられなかったけれど、最後 のガーデンコーナーにあった、あった!小さなテーブルと椅子。南欧風のちっちゃなセットをずっと探していたのだけど、チューリヒではなかなか見つからな い。あってもテーブルひとつに600フランもする。このセットは夫がまず「これは?」と見つけた。私のイメージとは少し違ったけれど、色も豊富で時間とと もにお気に入り度が深まった。値段も手ごろだし、つばつけました。

腕白でもいい

すごく気に入った写真をある雑誌で見つけ、切り抜いて仕事机の前に貼った。こんなことは初めてかも。

その雑誌はわたしたちが加入している健康保険会社から送られてきたもので、写真が載っていた記事のテーマはリタリンだった。今、リタリンを投与される子どもが増えている。中身は全然読んでいないけど、たぶん、その是非を問う記事なのだろう。

写真には2人の子どもが写っている。左側手前に大きく写っているのは、ベッドの上に腹ばいになり、両手にあごを載せている3、4歳の金髪ショートカットの 女の子。下唇を突き出して、ちょっとシラっとした感じだ。その右背後にベッドの上で元気よく飛び跳ねる同い年くらいの男の子。いかにも腕白そうな表情で、 でもすっごく楽しそうに、両足をぎゅっとお腹の方に引き上げて、ベッドの上の空中で止まっている。やっぱり金色をした髪の毛は、男の子が飛んで頂点に達 し、下降に入る一瞬に撮ったと見え、逆立っている。すごく躍動感にあふれた写真だ。逆立った髪と楽しそうな表情とMの字型に曲げた両足、そして空を掻く小 さな手。すべてが生命にあふれている。

前にいる女の子もこの腕白坊主にうんざりしている様子をよく表していて、なんとも素晴らしい組み合わせだ。

この写真を見た瞬間、私は声を出して笑った。何度も何度も、写真を手に取って笑った。なんて素敵な写真なんだろう。「腕白でもいい。たくましく育って欲しい」。そう言える社会が少し懐かしくなった。