スイスの使用説明書

スイスは、日本でも人気の高い国の一つではないだろうか。 グアムや東南アジアのように気軽に行ける場所ではないが、訳者が日本に帰ってはじめて会った人にスイスに住んでいることを話すと、「いいわねえ、スイスは憧れの国なのよ」などと言われることが少なくない。また、永世中立国であることや美しいアルプスの国であることもよく知られているようであり、スイスは日本にとって比較的身近な国といえるようだ。だが、逆に言うと広く普及しているのはこれらのステレオタイプのスイス像だけであり、スイス人がどんな人々なのか、どんな生活を送っているのかという実態を知る人はあまり多くないのかもしれない。

Gebrauchsanweisung 本書は"スイスの手引き書"である。歴史や政治、観光、行事など実に多様なカテゴリーを網羅している。実は、訳者は初めて原書を読んだとき、何度も笑わずにはいられなかった。「そうそう、その通り!スイスってそうなの。スイス人ってまさにそう!」と思わず膝を打つ記述が、ユニークにそしてまた皮肉っぽく全体にちりばめられているのだ。その文章スタイルもまたスイスらしい。数日の観光旅行では見通せない、その地に住んでこそ触れることのできるスイスの「真髄」を、本書でぜひみなさまにも体験していただきたい。

原書はドイツ人を対象として書かれているので、ドイツ人との比較が多く出てくるが、これも見方を変えれば一冊で二つの国を知ることができるわけで、読者にとって一石二鳥だろう。 本書を通じて、これまで日本であまり知られていなかったスイスの多面性を少しでも伝えることができれば、そして同時に訳者が経験した笑いを少しでもおすそ分けできればと願う。

『新評論』 2007年2月号より

原書:Gebrauchsanweisung für die Schweiz, 1996, Piper Verlag, ISBN 3-492-27507-9

著者:トーマス・キュング&ペーター・シュナイダー

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